歯科治療が行なわれるのは、一円玉より小さな世界

患者さんに治療について説明するとき、僕はよく一円玉のたとえ話をするんです。むし歯や歯周病の治療はものすごく緻密な世界で行なわれていて、一円玉に書かれた令和の「令」の点の字を削るようなもの。実際の治療部位はそれよりもさらに小さいわけですから、かなり精密な作業になりますよね。だからこそ当院は、拡大鏡を使った治療にこだわっている。このことをきちんと伝えるようにしています。
というのも、初診でいらした患者さんに診療結果をお話すると、「今までの歯医者さんで言われたことと違う」となってしまうことがあるんです。たとえばクラックが原因でむし歯ができていた場合、「歯にヒビが入っているなんて言われたことなかったのに……」とショックを受けられる方もいて。でもそれは、裸眼では見つけられなかったけれど、大きく拡大したら発見できただけのこと。以前に通っていた先生の所見が間違っているわけではなく、〝見えているものが違う〞という話なんです。
そもそも僕の医療観のベースは、「自分が患者だったらどんな治療をしてほしいか」にあります。専門的な視点からさまざまな選択肢を提案してもらって、その中で最善の手を尽くしてもらいたい。そうなると裸眼ではなく、拡大視野で診査診断・治療をしてくれる先生にお願いしたいと思うのは当然じゃないですか。拡大する大切さを伝えることは、患者さんに「ここにお願いしてよかった」と安心感を持ってもらうためでもあるんです。