酒井 敏貴理事長

技術はあって当たり前
大切なのは、患者さまを
どこまで〝想える〞か

酒井 敏貴理事長

TOKYO DENTAL OFFICE 西新宿(東京都)

EVK800(10倍) SurgiCamHDライトシステムキット

医療法人社団 旺誠会の理事長を務める、酒井敏貴先生。
2021年に「こうとうデンタルオフィス木場」を、2024年に「TOKYO DENTAL OFFICE 西新宿」を開業しました。
開業するにあたり、酒井先生が掲げたのは次の言葉です。
「すべては患者さまを想うことから始まる」
この信念を貫くために今や必要不可欠となっていることが、 拡大鏡『サージテル』と口腔内カメラ『サージカム HD』だといいます。

「相手の気持ちを考えること」は医療現場に最も必要なこと

酒井理事長

医学的に完治していたとしても、心に不安や悩みが残ったままでは完治とはいえない――。

いつか自分が歯科医院を開業するときは、この考えをモットーにしようとずっと心に決めていました。歯科医師になって医療に関する多くの知識や技術は身につけてきましたが、それだけでよいのだろうかという疑問が常々あって……。

治療は完璧でもコミュニケーションがうまくいかずに患者さまが転院してしまったり、逆に歯科の知識は少なくても思いやりのある歯科助手や受付スタッフがいるほうが患者さまの満足度は高かったり。そのような場面に遭遇する中で、「相手を想うこと」がいかに重要なことであるかを身に染みて感じていたからです。

そのことを教えてくれたのは、勤務医時代に出会った妻でした。私はもともと人に対してあまり深入りしないタイプ。でも妻は、交友関係も広く誰にでも愛情を注げます。雨の日に傘をお持ちでない患者さまにタオルをお渡ししたり、ご不安なお顔をされていることを察したらプラスのひと言のお声かけをしたり、相手の気持ちを考えた気づかいができる人です。

妻と出会ったころの私はちょうど、なかなか売り上げを伸ばせないことに悩んでいた時期でした。彼女の人との向き合い方を見ているうちに、「相手の気持ちを考えることは医療現場でも例外じゃないよな」と思うようになって。うまくいかない原因はそこにあるんじゃないかと気づいたんです。

患者さまを思いやると医院の売上にも変化が

なぜ患者さまはそんなに不安そうな顔をしているのか、今回遅刻してきたことには何か理由があったのか、そもそもどうして当院を選んでくださったのか。まずは、患者さまの一つひとつの行動に対して考えるようにしました。

たとえば、臨床的に自費の治療が適していると思い提案しても、患者さまのモチベーションがついてこないこともありますよね。そのようなときは一度じっくり向き合って、今思っていらっしゃること、感じていらっしゃることをうかがいます。

驚いたことは、そのようなやりとりを繰り返すうちに不思議と自費の治療を受けてくださる方が増えていったこと。コンサルの仕方を変えたわけでもないのに、です! 患者さまの思いと臨床的な判断がきちんとリンクすることが大切。それができてはじめて気持ちよく治療へ進むことができ、患者さま満足度につながるのだということが見えてきました。

ただ患者さまを想えば想うほど、どうしたって時間はかかります。ヒアリングはもちろん処置もより丁寧になるので、ときには予定を過ぎてしまうことも……。それにより次の患者さまに不安を抱かせてしまったら、元も子もありませんよね。

特に若いドクターはベテランに比べて時間がかかりますし、だからといって中途半端に終わらせてほしくない。私が目指す医院をつくるには、自分と同じように患者さまを想い、同じような技術のあるドクターを育成することが課題だと感じました。

教科書で学んだこともビジュアルだと消化が速い!

そこで西新宿の医院開業を機に導入したのが、口腔内カメラ『サージカム HD』。私が行なったオペの様子を録画して後輩のドクターたちに見てもらい、技術をレベルアップするための教育ツールとして使うことにしました。

彼らのスキルが上がれば処置時間を短縮でき、そのぶんを患者さまとのコミュニケーションに充てることができる。より丁寧な施術をすることにもつながるのではないかな、と。

実は私も勤務医時代、院長先生のオペの様子を動画で見せていただいたことがありました。切開線の位置や切り方、判断など、感覚ではなくきちんと落とし込めたことを覚えています。

オペのアシストについたときは、手順や切開線の絵を描いて記録に残したりもしますが、動画なら誰でもその場にいるような臨場感を味わえます。もう一度確かめたいときに、巻き戻して見られることも魅力の一つ。教えてくださる先生の「ここの対処はこのように」という曖昧な言葉もしっかりとイメージすることができるので、このやり方はすごくいいなと感じていたのを思い出しましたね。

言葉にならない部分を表現できるから伝わる

酒井理事長

自分が使うものとしてサージカム HDを選んだ決め手は、術者視点で録画できるところ。「この処置はこの角度から見る」というドクターの視野を共有することで、技術の習得に特化して伝えられると思いました。

結局のところ歯科医師は、どんなに勉強して理論武装しても、口腔内で体現できなければ意味がありません。本で学んだり口頭で説明されるだけでは限界があります。先輩ドクターの手技を感じ取り、感覚をつかむためには、ビジュアルの力ってすごく大きいのではないでしょうか。

録画した動画は、ドクターたちのグループLINEでも共有しています。見たいときに見ることができるので、「今ちょっと時間ができたな」という学びたいタイミングで活用してくれているようです。

なかでも「勉強になった」と言われるのは、切開の方法、剥離の加減、形成の仕方――。支台歯形成は患者さまの開口量、頬や舌の位置、歯列の状態、歯の位置により難易度が変わってきます。いろいろなパターンを見ることで、技術の安定化にもつながっていると思いますね。

サージカム HDを導入してまだ1年程度ですが、ドクターたちの施術の精度が上がっていることは明らかです。伝え上手ではない私の「ここ、ここ!」という言葉にならない部分も、きちんとピックアップして代わりに伝えてくれますから。小さな口腔内の世界を表現してくれる、そんな存在ですね。

〝相手を想うこと〞は、ビジネス論や経営論を凌駕する

酒井理事長

医療を提供するだけの場所にはしたくないこと、患者さまの不安や悩みを癒して笑顔で帰っていただきたいこと、それらすべては相手を想う気持ちから始まること……。木場と西新宿の二軒の医院をオープンしたとき、理念をまとめた冊子を作ってスタッフたちに配りました。

また、週報という形の交換ノートに学んだことや改善できなかったことを書いてもらい、それに対するアドバイスもしています。

もちろん一度では方針を理解しきることができないスタッフもいましたが、徐々にマインドが変わってきて言葉づかいが改善したり、行動に活気が出てきたり。考え方や理念を伝え続けることの大切さを実感しますね。

この4年間は本当に挑戦の期間でしたが、私の思い描いた医院が少しずつ形になってきているように感じられてうれしいです。

ビジネス論や経営論を学んでいくと、うまくいくためのコツとか方程式がたくさん出てきます。しかしそれをすべて凌駕するのが、「相手を想うこと」だと私は思うんです。

当院へ来てくださる患者さまには、心地よさを感じていただきたい。その気持ちをスタッフ全員が持つことで、知識と技術とコミュニケーションが相乗的に重なった歯科医院に成長していける。そう思って前進しています。